はじめまして、水戸市に住んでいる新堀麻子といいます。
地域の情報誌で編集を手伝ったあと、ペット用品のお店で6年ほど働き、いまはフリーでライターをしています。
家には13歳になるミニチュアダックスと、保護猫が2匹います。
うちの犬を初めて動物病院に連れて行った日のことは、いまでもよく覚えています。
診察室で「いつからですか」と聞かれて、「たぶん先週くらいから……」としか答えられませんでした。
食べているフードの名前も出てこない。
譲渡のときにもらった書類は、玄関の棚に置いたままでした。
怒られたわけではありません。
ただ、自分がこの子のことを何も把握していなかったのが、けっこうこたえました。
初診で緊張するのは当たり前だと思います。
でも、聞かれることはだいたい決まっています。
先に知っておけば、それだけで診察の中身が変わります。
行く前に用意しておくもの、診察室で聞かれること、こちらから聞いておきたいこと。
この3つを順番に書きます。
目次
初診は、家を出る前に半分終わっています
初診がうまくいかない原因は、診察室ではなく家を出る前にあることが多いです。
予約が要るかどうかは、病院によってまるで違う
完全予約制のところもあれば、予約なしで直接行っていいところもあります。
「初診は午前のみ」「初診の受付は終了30分前まで」といった独自のルールを設けている病院も珍しくありません。
日本全薬工業のサイトでは、子犬を初めて連れて行くときは事前に電話で初診だと伝えておくよう勧めています。
免疫が十分でない子犬は無症状でも病原体を持っていることがあり、他の犬と離す配慮が必要になるからです。
中央動物専門学校がまとめた動物病院選びのポイントでも、診療時間や休診日、夜間の対応は事前に確認しておく項目として挙げられています。
初診の受付ルールは、たいてい病院のサイトに書いてあります。
行くと決めたら、まずそこを読んでください。
もうひとつ見落とされがちなのが、サイトのお知らせ欄です。
手術が立て込んで午後の診療開始がずれる、臨時休診にする、といった告知はわりと頻繁に出ます。
一度のぞいておくだけで、無駄足を防げます。
受付終了ぎりぎりに駆け込まない
初診は問診に時間がかかります。
症状の経過、これまでの病歴、暮らしぶり。
再診の子より確実に長くなるので、受付終了の直前に飛び込むと、こちらも病院も慌ただしくなります。
「初診の方は受付終了の1時間以上前にお越しください」と明記している病院もあります。
書かれていなくても、余裕を持って家を出るに越したことはありません。
持って行くもの
初診に持って行きたいものを整理しました。
全部そろわなくても大丈夫ですが、上の4つはできるだけ。
| 持ち物 | なぜ必要か |
|---|---|
| ペット保険証 | 窓口精算に対応している病院なら、その場で保険が使えます |
| ワクチン証明書・予防歴のメモ | 接種済みの種類と時期が分かると、疑う病気の範囲が絞れます |
| 過去の検査データ | 以前の数値と比べられると、今の数値の読み方が変わります |
| 飲ませている薬・サプリ | 現物かパッケージごと持参。飲み合わせの確認に使います |
| フードの銘柄が分かるもの | パッケージの写真で十分。おやつも含めて |
| 便・尿・吐いたもの | 症状に関係しそうなら。ビニールや容器に入れて |
| 症状を撮った動画 | 病院では出ない症状ほど役に立ちます |
| キャリー、リード | 移動中と待合室で必要です |
| タオル、おやつ、トイレシート | 待ち時間が長引いたとき用 |
動画は、たぶん一番効きます
家では咳をするのに、病院に着いたら出ない。
これ、本当によくあります。
うちの犬も、後ろ足を引きずるのが気になって連れて行ったのに、診察台ではしゃんと歩いてしまって困りました。
「家だと変なんです」と口で説明しても、うまく伝わらない。
発作、咳、震え、歩き方の異常。
再現されにくい症状ほど、10秒でいいので撮っておくと話が早いです。
診察室で聞かれること
獣医師の平松育子さんが監修した動物病院の初診についての解説では、問診で確認される内容として次のような項目が挙げられています。
- いつから、どんな症状が出たか。きっかけになりそうな出来事はあったか
- 症状がどう変化しているか
- 食欲と元気があるか
- 排泄の回数と状態
- 嘔吐や下痢の頻度、程度
- ワクチンの接種歴
- これまでの病歴とアレルギーの有無
- いま飲ませている薬やサプリメント
- 普段の食事の内容
病院によっては、待合室で問診票に記入してから診察室に入る流れになっています。
書いた内容をもとに、獣医師がさらに詳しく聞いていく形です。
症状以外に、暮らしのことも聞かれます
何を食べているか、散歩はどれくらいか、家に他の動物はいるか、室内だけで過ごすのか外にも出るのか。
生活環境の話もひととおり聞かれます。
ここで詰まりやすいのが、家族で世話を分担している家庭です。
朝ごはんは母、散歩は父、という分け方だと、連れて行った人が答えられない質問が必ず出ます。
その子の一日を一番よく知っている人が行くのが理想ですが、難しければ家族に先に聞いておくといいです。
答えられないときは「分かりません」でいい
これは自分への戒めでもあります。
うろ覚えのまま「たぶん3日前です」と答えるより、「はっきりしないのですが、先週の後半にはもう様子が変でした」のほうが役に立ちます。
あいまいな記憶を確定した情報のように伝えると、診断が遠回りになります。
診察前のメモは、これくらい書いておくと安心
スマホのメモ帳に、行く前にこんな形で書いておくと落ち着いて話せます。
・気づいたのは7月20日の夜。夕ごはんを半分残した
・21日から水を飲む量が増えた。器に足す回数が倍くらい
・便はゆるめ。血は混じっていない
・22日の朝に1回吐いた。白い泡状のもの
・フードは○○(成犬用ドライ)。おやつはささみジャーキーを1日2本
・飲ませている薬なし。去年の血液検査で肝臓の数値が少し高いと言われた
・聞きたいこと:今日できる検査/費用の目安/次の来院はいつか
日付と数字が入っているだけで、伝わり方がまるで変わります。
犬と猫で、待合室の過ごし方が変わります
待合室には、体調が悪い子やこれから手術を受ける子がいます。
自分の子のためにも他の子のためにも、連れ方には気をつけたいところです。
犬ならリードを短く持つか、キャリーに入れておきます。
人なつこい子ほど他の犬に近寄りますが、初対面同士を接触させないほうが無難です。
猫は、キャリーに入れて行くのが前提になります。
上から開けられるタイプだと、無理に引っ張り出さずに診察できるので、猫の負担がぐっと減ります。
大きめのタオルや布でキャリーを覆って外が見えないようにすると、パニックを起こしにくくなります。
自宅のにおいがついたタオルを入れておくのも効果があります。
うちの2匹は性格が正反対で、上の子は覆いをかけると静かになり、下の子は逆に暴れます。
暴れるほうは、病院に勧められて洗濯ネットに入れてから連れて行くようにしました。
猫の負担を減らす取り組みは、国際的な認定制度にもなっています。
ISFM(国際猫医療学会)の「猫にやさしい動物病院」認定がそれで、待合室の環境や設備が猫に配慮されているかを100項目ほどの基準で見ます。
こちらから聞いておきたいことリスト
ここまでは聞かれる側の話でした。
ここからは、こちらから聞くことです。
遠慮はいりません。
その日のうちに聞くこと
- 今日の見立ては確定なのか、まだ可能性の段階なのか
- この検査は何を調べるためのもので、結果はいつ出るのか
- 今日かかる費用と、この先かかりそうな費用の目安
- 薬の飲ませ方。どうしても飲まないときはどうすればいいか
- 次はいつ来ればいいか。その前に来るべき悪化のサインはどれか
費用の話は聞きにくいと思われがちですが、聞いて嫌な顔をされたことは一度もありません。
金額だけで病院を選ぶ話ではないにしても、見通しは知っておいたほうが落ち着いて相談できます。
長く付き合うために聞いておくこと
- 夜間や休診日に具合が悪くなったらどうすればいいか。連携している救急病院はあるか
- 予約の取り方と、混みやすい時間帯
- 支払い方法。カードやQRコード決済が使えるか
- ペット保険の窓口精算に対応しているか。対応している保険会社はどこか
- 他の病院で相談したくなったとき、紹介状や検査データを出してもらえるか
最後の項目は聞きにくいかもしれません。
でも、他院を受診するときに一番効いてくるのが、それまでの検査結果や画像データです。
紹介での受診には事前連絡を求める病院も多いので、手順だけ知っておくと慌てずに済みます。
犬を迎えたばかりなら、登録と狂犬病予防注射も
初診が予防接種を兼ねる場合は、手続きの話も出てきます。
厚生労働省の犬の鑑札、注射済票についてによると、犬の飼い主には3つの義務があります。
市区町村への登録、年1回の狂犬病予防注射、交付された鑑札と注射済票を犬に着けておくこと。
生後91日以上の犬が対象で、注射の時期は毎年4月から6月とされています。
水戸市なら、飼い始めた日から30日以内(子犬は生後90日を過ぎてから)に登録します。
水戸市動物愛護センターの案内では、登録手数料が1頭3,000円、動物病院で個別に注射を受けた場合の注射済票交付手数料が500円。
春の集合注射は手数料込みで3,500円です。
この登録を代行してくれる病院もありますが、「代行は市内在住の方のみ」といった条件がつくことがあります。
市外から通う場合は自分で届け出が必要になるので、注射の前に確認しておくと二度手間になりません。
マイクロチップも聞いておきたい項目です。
公益社団法人日本獣医師会のページによれば、令和4年6月以降に装着した場合は環境大臣への登録が必要で、動物病院が発行する装着証明書を使って手続きします。
それ以前から装着している場合は、既存の団体への登録のままで構いません。
茨城県内なら、公益社団法人茨城県獣医師会が不妊去勢手術やマイクロチップの助成事業をやっています。
条件や時期は年度で変わるので、こちらも確認してみてください。
初診の案内が細かい病院は、それだけで信用できると思っています
病院選びに絶対の正解はありません。
それでも私が一つの目安にしているのが、初診の人向けの案内をどれだけ丁寧に用意しているかです。
たとえば、ISFMの「猫にやさしい動物病院」認定を茨城県で初めて受けた水戸動物病院のサイトには、初診の方向けのページが独立して用意されています。
持って来てほしいもの、来院してほしい時間帯、犬と猫それぞれの待合室での連れ方、予約が必要なケースと不要なケース。
飼い主が迷いそうなところが、ひととおり書かれています。
こういう案内を作っている病院は、診察室でも説明を省かないだろうと思っています。
統計を取ったわけではありません。
ただ、ペット用品店で6年間いろんな飼い主さんの話を聞いてきた実感として、そう外れてはいない気がしています。
まとめ
長くなったので、要点だけ並べます。
- 行く前に、予約の要否と初診の受付ルールを病院のサイトで確認する
- お知らせ欄で臨時休診や時間変更が出ていないか見ておく
- 保険証、ワクチン証明書、過去の検査データ、飲ませている薬。この4つは優先して持つ
- 症状は動画で撮っておく。日付と数字をメモに書いておく
- 分からないことは「分かりません」と答える
- 夜間の対応と支払い方法は、元気なうちに聞いておく
初診の日は、たいてい飼い主のほうが緊張しています。
私もそうでした。
うちの犬は13歳になり、通院の回数もずいぶん増えました。
それでも診察室で慌てなくなったのは、メモを持つ習慣がついたからです。
これから初めて動物病院に行く方の役に立てば嬉しいです。